図書館自体の分類:国会図書館とそれ以外
図書館と言えば、どのようなイメージを持っているだろうか?筆者は、図書館の1つの用途は「調べ物」であると考える。ネットが普及する世の中ではあるが、ネットに載っていない情報は多い。そしてネットに載っていない情報こそ価値があるので、図書館の使い方は今後も大変重要になるはずだ。
図書館の活用方法を考える前に、図書館自体の分類をしてみよう(図1参照)。まず図書館は運営母体で2つに分類できる。運営母体は大きく2つ、①国②地方自治体だ。
国が運営する唯一の図書館が国立国会図書館だ。国立国会図書館は国立国会図書館法によって、日本国内で発行されたすべての出版物(マイクロフィルム、CD、DVD、地図などを含む)を国立国会図書館に納入することが、出版者に義務付けられている。つまり、日本で出版されたすべての本に当たることができる図書館だ。
次に地方自治体が運営する図書館について見てみよう。地方自治体が運営する図書館は、いわゆる私たちが日常イメージする図書館だ。このタイプの図書館は、図書を借りたりその場で読んだりすることで、広く図書を社会に提供することが役割だ。
一方で地方自治体が運営する図書館にも、特殊な図書館がある。この図書館こそこの記事で取り上げたい図書館で「学術情報に強い図書館」と呼ぶ。これはその名の通り、学術雑誌・学術図書を調べやすい図書館のことだ。数は少ないが、学術情報を調べる際に大変頼りになる。そしてこの「学術情報」こそ、ネットに載っていないが価値のある情報の代表格である。今回はその調査方法に焦点を当てる。
学術情報に強い図書館の比較(国立国会図書館・都立中央図書館・都立多摩図書館)
ここからは、学術情報に強い図書館を比較して見ていきたい。比較を行う理由は、これらの図書館を用途に応じて使い分けることができるようにするためだ。
学術情報に強い図書館として、下記3つを取り上げる。
- 国立国会図書館
- 東京都立中央図書館
- 東京都立多摩図書館
これら3つの比較については、表1をご覧いただきたい。まず国立国会図書館は、調査対象にできるデータが多いことが最大の強みである。日本で出版された図書のすべてが登録されているので、調べたい対象が明らかであればその図書に確実に当たることができる(但し、図書に当たる方法は、取り寄せや電子データ等、図書の保管状況による)。ただし、探したい図書が決まっていないときには、要注意だ。国立国会図書館においては、図書が実際には書架にほとんど並んでいない。よって、手に取りながら図書に当たることはできない。
次に東京都立中央図書館を見てみよう。この図書館は、学術図書の在庫を多数抱えているという特徴を持っている。書架に実際に図書が並んでいるので、手に取りながら図書を確認することができる。調査したい対象は決まっており、図書で調べたいことまで分かっているがどの図書が適切か分からないときには、都立中央図書館がおススメだ。また瀟洒な大使館街にあり、落ち着いて利用ができる。オシャレな雰囲気で、調べ物がはかどることだろう。ただし、学術雑誌(定期的に学会等から発行される雑誌)の在庫が少ないことが難点だ。
その難点をカバーするのが、東京都立多摩図書館だ。この図書館は、学術雑誌の在庫を武器にしている。いくつかの学術雑誌を手に取って、中身を見たいときにはこちらがおススメだ(なお、東京都中央図書館と東京都立多摩図書館は、学術図書と雑誌で、その役割をすみわけている。そのため、都立多摩図書館が学術雑誌に強みを有することは必然だ)。また、児童書が多いことも、学術情報には関係ないが、個性的な強みだろう。
なかなか調査の機会すら少ない学術情報であるが、いざ調べるとなると調べ方が分からないことがある。そんなときに、各図書館を使い分けて情報収集ができると効率的ではないだろうか。
コメント